「先生をやりながら趣味の時間は持てるの?」
プライベートの時間を充実させている先生に、取材します。
今回は中部地方で働く30代小学校教師、とぅけ先生(@tttuuuke)にインタビューしました。
筆文字って実は気軽に始められる趣味なんです!
とぅけ先生のプロフィール
名前 | とぅけ |
年齢 | 30代 |
勤務場所 | 中部の公立小学校 |
勤務形態 | 常勤 |
@tttuuuke | |
@fude__tuuuke |
趣味は筆文字

とぅけ先生の趣味を教えてください!

趣味は筆文字ですね
筆文字と習字ってちがうの?

筆文字って「習字」や「書道」とは別なんでしょうか

たぶん違うと思います。
型は全然なくて、自分なりに(書く感じ)。僕は とめ とか はらい とか点打つ場所だったり、何も意識してないです。
筆文字は1枚の紙に自分が伝えたい想いを書く、キャッチコピーみたいな感覚ですかね

美しい字を書くわけではなく、芸術的に書くって感じですか?

そうそう、アートみたいな感じかな。書道とは一線を画してるっていうか。
もちろん丁寧に筆文字を書いてる人もいますけど、僕は型にはまらずに崩す、アートの感覚に近いかもしれないですね
「字を崩す」って?

「字を崩す」っていうのはどんな風に崩せばいいんでしょう。素人には難しく感じるのですが…

例えば、一部分だけめっちゃ太くしたり、字間めちゃくちゃ詰めたり、一直線(に文字を書くん)じゃなくて曲げてみたりとか。
人それぞれの崩し方があるので、正解とかは別になくて

つまり自由に書いて大丈夫ってことですか?

大丈夫だと思います。僕が大丈夫って言っていいのかな、僕的にはすごい自由にやってますね

感性に従って書くってことでしょうか

そうですね。自分の好きなように色をつけたり、感性ですね

字の崩し方っていうのは文字ごとに決まっているんですか?それとも言葉に合わせて変えるんでしょうか

あんまりこだわりはなくて、いろいろ書けるようにはしてます。
実演しますか?

見たいです!

とぅけ先生が書いてくださったいろんなパターンの「あ」

こういう風に細くしたり、しなかったり。
だから気分というか、自分なりに崩せます

じゃあそのときの気分で字の形は変わるってことですか?

はい。ずっとやってると「ここ太くしたら良い感じに見えるな」とかはわかってくるので、毎回変えはしないですね

とぅけ先生は芸術家肌ですね…うらやましいです

うーんどうなんですかね。「筆文字 かわいい」「筆文字 かっこいい」とか調べたらいろんな人が書いてるので、真似してみたりいろいろな練習はしてます
始めたきっかけ

筆文字は始めてからどれくらいになるんですか?

始めてまだ4〜5年ぐらい、本格的にやり始めたのは3年ぐらい前かな。クラスの子に(筆文字で言葉を)伝えようとか、Twitterで発信してプレゼント企画とか行ったりとか、後輩に命名書を書いてあげたりとか

筆文字を始めたきっかけは何だったんでしょうか

先生方の研修会みたいなのあるじゃないですか。それに参加したときに師範が来てくださってて、「みんなで書いてみよう」みたいな感じで始まりました。
最初は全然興味なかったけど、おしゃれだなーかっこいいなーっていう憧れみたいな感じで入っていきましたね
筆文字は誰でも始められる

筆文字って素人がやるものじゃないって先入観がありました

全然始められます、本当に。
そうおっしゃられる方ってすごく多いんですけど、僕の始めた当初はこんな感じなんですよ。今と全然ちがくないですか
(とぅけ先生が筆文字を始めた頃の作品を見せてもらいました)

違いますね、全然!またなんか味があるというか

僕の筆文字を見て「先生みたいにできない」っていう人たくさんいますけど、全然気にすることなくて。本当にこう、数をこなすというか。
僕は美術「2」だったし、芸術大学は出てないし、図工はどっちかっていうと嫌い、書写もそんなに好きじゃない、上手に書けなかったから

そうなんですか!?てっきり習字や美術が得意だったのかと…

僕的には素人だから始められる感覚はありますね。あんまり型を知らないからこそガンガン(文字を)崩せるというか。まあ型も大事なんですけどね。僕も今になってからですけど「ここはこうやって跳ねるんだ」とかちょっと勉強したり

最初に型から入らなくても始められるってことですか?

始められると思います

筆文字のイメージが変わりました。習字やってる人しかできないものだと思ってたので

全然、大丈夫です

書いてるうちに上達するってことですね

そうですね。自分が大事にしてるのは、下手とか上手いとか気にせず人に見てもらうことです。自分でも「ん?」って思った字を「すごい味がありますね」って言われたりするんですよ。だから自分の認識との違いを感じれらるっていうか。
コツコツひとりで練習したってよりも、どんどん外に出してった感覚はありますね
筆文字に必要なもの

「誰でも始められる」ってことですが、何があればいいですか?

筆ペンの種類っていろいろあるんですけど、僕はぺんてる。これ1本700円ぐらいかな。
スケッチブックは100均です。始めるならこれだけです

100均のでいいんですか!てっきり専用の紙が必要なのかと思ってました

普通の画用紙とかスケッチブックですね。
和紙を用意して〜とか全然そんなことはなくて。若干ノリが違ったりはしますけど。
始めようと思えば初期費用は1000円以内で済みますね

だいぶハードルが下がって本当に始められそうな気がしてきました…!

ぺんてるはアートブラッシュって言って、こういう色筆ペンがあるんですよ。
さっきお見せしたこういうのも色筆ペンを使ってるんですけど、18色ぐらいあるのかな。

そんなにあるんですね、色選びも楽しそう

全部合わせて1万円いかないです。初期費用はすごく安く、思い立ったら始められる。必要なものは本当に紙とペンだけですね

さっき見せてくださった文字はグラデーションカラーに見えたんですけど、あれもそういうペンが売ってるんですか?

これはですね、色ペンを絵の具みたいに混ぜるだけです。ちょっとコツがいるんですけど、押せば出てくるインクをペッペッて筆につけていろんなグラデーションができる感じです

ペンから絵の具みたいに色が取れるんですか?

そうですそうです。
ただ僕がTwitterに上げてるのはiPadで編集してるんですよ。筆ペンで画用紙に書いて、カメラで取って、背景を透明化して、ペイントアプリで(色を)つけてますね。デジタルとアナログの融合。僕は色つけたりするのが苦手で不得意なところはアプリに頼ってます

アプリの使い方はどうやって勉強しましたか?

YouTubeにいろいろ上がってるんですよ。
でもそんな何日も(勉強したわけじゃない)ですよ。「この人が色つけてるの、こうやってやるんだ」ぐらいです。1時間も勉強してないですね
筆文字の良いところ

筆文字の良さや魅力を教えてください

まず、誰でも始められる

確かに、私も気楽に始めてみようかと思いました

あとは、自分が伝えたいことを外に出すっていうのはアウトプットになる。「自分はこういうことを大事にしてるんだなあ」っていうのを再認識できるっていうか。
僕は「本質を見失うな」とか「ルートはひとつじゃない」、「人生にモットーを持つ」とかいろいろ書いてるんですけど、伝えたいことは(長い間)そんな変わってないんです。これ今でも伝えてるなぁとか思います

言葉を書き続けることで、大事にしてることが明確になるわけですね

あとは良いところ…、なんか“良い感じ”に見えますね。筆っていう時点で味がある。温かみがあるっていうか。
まあそもそも日本人が書道を小学校でやってるくらいなので、そういう伝わりやすさはあるかな

確かに、機械的な文字よりも心に響いてくる感じはあります

あとは日常でも使える。例えば命名書書いたりとか、結婚式の返信やウェルカムボード書かせてもらったりとか

節目の行事に筆文字があると良いですよね…!

教育だけじゃなくて日常生活に、ふとしたときに使える。もちろんそれが目的でやってなかったんですけど、けっこう需要が多いんですよ。だからそこら辺も魅力ではあるのかな、と思いますね
言葉の生み出し方

とぅけ先生の筆文字は響く言葉が多くてすごいなって思ったんですけど、どうやって言葉を考えてるんですか?

うーんとですね…例えば子どもの言葉からもらったりします。学級経営の中で子ども達に振り返りを書いてもらって、その中で素敵だなって思う言葉とか。
あとありきたりですけど歌詞から引用したり。あとは、頭の中に残ってる言葉をくっつけたりとか。
なるべくストレートに伝えるようにしてますね

振り絞らずとも言葉が出てくるって感じですか?

多分どっかで(言葉に)出会ってるんだと思います。本を読んだりアニメで観たり、YouTubeや講演会で誰かがしゃべってるの聞いたり。
良いなと思った言葉はメモアプリでストックを貯めとく。もちろん自分で作り出すこともありますけど、結局はどっかで見てたりするのかなとは思ってますね

言葉のストックが自分の引き出しを増やすわけですね

そうですね。そんな感じでいろいろくっつけ合わせたりして、出会った言葉を送ってます
筆文字にかける時間

筆文字はどういうときに書いているんですか?

本当にまちまちなんですが、例えば朝職員室についてすごい新鮮な気持ちでパーって書いたり、子ども達が帰ったあとの教室でぼーっとしながら書くときもあります

時間帯は決まっていないんですね

平日の夜に自分の部屋でばーっと書くこともあるし、ルーティーンはなくて、様々なシーンで書いてますね

書く頻度はどのくらいですか?

全然決めていなくて、子どもたちに向けて筆文字を掲示するっていうのも毎日やってるわけじゃなくて、2日おきのときもあるし、「今週は元気だから毎日書くか」とか。
頑張って言葉を生み出そうっていうのはあんまりしたくなくて、伝えたいときに「これ書こう」みたいな感覚の方が(良いです)。どうしても頭ひねって考えなきゃいけないってときはやめます、疲れちゃうので。
だから頻度は適当ですね

普段お仕事忙しいと思うんですが、「筆文字を書く時間を取ろう」っていう意識はありますか?

それはあんまりないかな。学級通信とか教材研究とか終わって「さ、やろうかな」ぐらいの息抜き、本当に趣味の範囲なんですよ。そこまでがっつり時間を取ろうっていうのはあんまりない。
けど書いてる時間はすごく楽しいので、そういう意味で「早く書きたいな」っていうのはあるけど、「筆文字最優先で」っていうのは特にないですね

ということは、めちゃめちゃ時間かけて書いてるってわけではないんですか?

全然です。言葉が決まってるなら10分かからないんじゃないですかね。1時間集中して書くとか、そんなことはないです

そうなんですね。てっきり時間をかけなきゃいけないものなのかと思ってました

全然。
僕こだわりがあって、子ども達に掲示してる言葉は一発書きなんですよ

失敗作はないってことでしょうか

うん、ほとんど(ない)。
それこそ多少ミスっても味に見えるっていうか。それもいいところなのかな

なるほど、より気楽にできそうだなって思いました
筆文字を生徒に見せた反応

学校の子ども達には最初、どんな風に見せたんですか?

初めて見せたときは、普通に「今までやってたぜ」みたいな感じで見せました。イーゼルにスケッチブックをポンって置いて、「みんなに伝えたいこと書いてくね」って感じで自然に。
僕は伝えたいこと(を伝える)っていうのは学級通信(作り)がベースにあるので、そこは結構スムーズだったかもしれないです。

普段から伝えたいことを言葉にしていたから、子ども達にとっても自然な流れだったんですね

よりコンパクトに伝えたいことをまとめる、想いを発信できるのが筆文字かなっていう感じですね

筆文字を初めて見た子ども達はどんな反応でしたか?

子ども達は「えーすごい!」ってなりますね。
今はもう始めて3〜4年でほぼ毎日のように飾られてるので、目が肥えてきて「はいはい今日はこれね」みたいな反応です
筆文字は教師におすすめか?

筆文字は教師の趣味としておすすめですか?

おすすめですね。学級経営にも使えると思います。
例えば一筆便せんって言って、僕はどなたかの先生がやってるのを真似させていただいてるんですけど、例えば勇気ある行動をした子がいたら大きく「勇」って書いて、これ連絡帳に貼っといてねとか。優しくできた子がいたら「優」って書いたり

それは連絡帳に貼ってあったら嬉しいですね

教師って子ども達に伝える仕事なので、自身のアンテナが高くなるって意味ではおすすめですね。ちょっとした看板に目が向いたり、駅とか歩いてても響くキャッチコピーに目がいったり。それこそ歌詞も今までスーって聴いてたのが「この歌詞素敵だなぁ」とか、言葉に敏感になれる。
やっぱり書いてると良い言葉で伝えたいなとか、うまく伝わるように書きたいなってなるので

素敵なお話、ありがとうございました!
▶︎とぅけ先生の素敵な筆文字が見られるInstagramはこちら!
インタビューまとめ
- 筆文字は型にとらわれずに書くアート
- 自由に字を崩してOK
- 初期費用は1000円以内
- 伝えたい言葉を書き続けることでアウトプットになる
- 良いと思った言葉をストックしておく
- 筆文字は誰でも始められる
この記事に出てきたもの