先生の活動!今回のインタビューは東京都板橋区立の小学校で働く西田雅史先生。
株式会社weclipに教育アドバイザーとして携わる西田先生に、事業内容や本業への影響などを伺いました。
教師の副業に興味のある方や、学校とは別のフィールドで生きがいを見つけたい先生はぜひ参考にしてください!
西田雅史先生のプロフィール

名前 | 西田雅史 |
年齢 | 38歳 |
勤務場所 | 東京都板橋区の公立小学校 |
勤務形態 | 専任 |
@mcmcmc0925 | |
https://www.facebook.com/ultrasoul.masashi/about |
株式会社weclipでの副業についてインタビュー

西田先生は株式会社weclip(ウイクリップ)で副業をされているんですね。
まずはweclipがどんな組織なのか教えてください!

weclipは「we create our life platform」の略称で、教育支援事業を行っています。
大きく3つの活動があります。
- 総合的な学習の時間の授業づくりの伴走……学校と外部人材が接点を持つお手伝い
- オンライントークイベント……教育のテーマで月1〜2回行う
- 子ども達にいろんなスポーツの機会を提供する……現在、12月に世田谷区で行うイベントの準備中

weclipについて、事前に協育プラットフォームだというお話も伺ったのですが、「協育」とはどういう意味でしょうか

教育ってよく学校や先生という枠組みで語られると思うんですけど、子ども達を育てるのは学校と先生だけじゃないんです。
ただ「教育」って言うとどうしても敷居が高くて「先生に任せる」「学校でなんとかしてください」とか言われてしまうんですけど、そうではなくて、学校はもちろん家庭での教育、地域の教育、さらには企業も巻き込んで「大人みんなで協力して子どもに関わっていきましょう」という意味で「協育」と言っています
1.総合的な学習の時間の授業づくり

ではまず、「総合的な学習の時間の授業づくりに伴走する」という活動内容を具体的に教えてください

学校から「こういう人材を紹介してほしい」とお願いされ、我々が間に入って外部の人を紹介しています。地域以外の人はオンラインで繋いだりもします

学校と学校外の人を繋ぐというのは、どちら側から依頼されるんですか?

基本的には学校からです。
公立小学校には外部講師のストックがなくて、自分の足を使って0から人をあたらないといけないといので、我々が間に入っています

外部講師は学校にとって必要な存在なのでしょうか

もちろん自分たちで課題意識を持って学習を進めていくんですけど、外部の声や知見も入れていかないと、自己満足の学習になってしまうんです。
例えば『環境』がテーマなら、環境問題を専門に扱うプロを呼んでお話してもらいます。そうすることで、学習が活性化したり新たな視点を得て「次はこういう学習にしてみようか」という展開になっていきます
2.オンラインでのトークイベント

オンライントークイベントはどんな内容ですか?

多岐に渡る教育テーマの中で、weclipのメンバー間で「次はこういうテーマでやってみようか」と挙がったことをSNSで告知して、参加者を募っています。
初めは座談会のような感じだったんですけど、徐々に専門知識に長けた方をお呼びして、お話を伺いながら参加者でトークしていくという流れになりました

参加者はどういう方達なんでしょうか

一番多いのは小学校の先生ですね。ほかにも中学校の先生や保護者、地域のスポーツクラブの方が参加することもあります

参加者の属性を限定しているわけではないんですね

そうですね。
「教育」って言うとどうしても先生や学校だけのものだと思われがちなんですけど、weclipは「教育をもっと身近に」という理念を掲げています。学校だけではなく保護者や地域、企業も含めてみんなで教育に関わっていく社会を作りたくて活動しているので「教育に興味ある方は誰でも参加してください」という形が多いです
3.子ども達にスポーツの機会を提供する

子ども達にスポーツの機会を提供するというのは、どういう内容ですか?

子ども達にいろいろなスポーツの機会を提供したいという思いがあるのですが、そのために僕らがそれぞれのスポーツを担当するのは難しいので、地域にある既存のスポーツクラブに僕らが作るプラットフォームに入ってもらいたいんです。
そこに子ども達を呼んで「このプラットフォームに来ればいろいろなスポーツを体験できますよ」という形を想定しています。その資金集めとしてクラファンをやりました

いろんなスポーツが体験できるのってすごく楽しそうですね

楽しいというのが大前提だと思っています。
1年前に埼玉県川越市で前身のサービスをスタートさせていて、今は2拠点目として東京都世田谷区でやろうとしています。
日本全国でそんなプラットフォームを作ることができれば、子ども達がコロナ禍で失ってしまった体を動かす機会や居場所を取り戻すことができるんじゃないかと思っています

weclip入社のきっかけと社内での立ち位置

サッカー部の仲間でweclipを立ち上げたということですが、西田先生が携わることになったきっかけを教えてください

僕以外のメンバーは一般企業の人や自分で会社を経営している人なのですが、そのメンバーの話し合いで「僕らは教育について全然知らない」「教育現場で働いている人の話を聞いた方がいいんじゃないか」となって、声をかけてもらったのがきっかけです

西田先生はどんな役割で携わっているんでしょうか

教育アドバイザーという立ち位置で、いっしょに活動を進めています。
例えば、学校と外部の人を繋いだときに学校側の実態を伝えたり、学校教育について「先生という立場から見るとこう思う」などの意見をしたりします

先生としての意見はほかのメンバーからどんな風に捉えられますか?

驚かれることが多いですね。一般企業の方にとっては学校内の情報が非常に新鮮である側面と「せまい考え方だよね」っていうのは折に触れて出てきます。
weclipのような会社が学校を外から突いて、教育を開いていくことも必要なのかと思います
兼業届の申請について

weclipの活動は副業として学校に届出をしているんでしょうか

兼業届を区に提出して、向こう2年間の活動が受理されています

ということは、副業収入があるってことですか?

今はまだ収入がない状態なんです。
でも管理職から「収入を得る可能性があるなら、絶対に届を出しておいた方がいい」と言われていたので、兼業届けを出しました

収入を得てから届を出すよりも、収入を得る前に届を出しておいた方がいいんですね

そうです。それが逆だと申請に引っかかってしまうので

西田先生の副業申請はすんなりと通りましたか?

僕の場合は通りました。
管理職や自治体によってけっこう違うみたいなんですけど「本業に支障がない、本業に活かせるような副業であればほぼ受理される」と管理職から聞きました。
兼業届は区で受理される前に管理職を通すので、管理職からの理解は必要だと思います

職場の同僚へ副業の話をすることはありますか?

話していますが、前の管理職には「話さない方がいい」と言われました。恨み嫉みにつながるからって。
僕はあんまり気にしないので言っちゃいますけど、「本業が疎かになることがあれば副業のせいにされるかもしれないから」と忠告されました

いろんな考えの先生がいるから難しいところですよね。
西田先生は本業に支障なく副業へ取り組めていますか?

そうですね。本業が忙しく立て込んでいる場合は本業に全振りして仕事しますし、そこはちゃんとパワーを振り分けられていると思います

教員と副業を両立させる思い

普段は教員として働きながら、weclipにはどれくらいの頻度で携わっているんでしょうか

基本的には週1回、土日どちらかの夜に2時間ミーティングをして、そこから1週間は個人のワークを進めます。1週間後に「どこまで進んだのか」「これからどんなことをしていこうか」という目線合わせを行います

本業と副業を両立するために心掛けていることはありますか?

副業を始めてから脳みそを2つに分けているようなイメージがあって、本業のときは本業の脳みそ、副業のときは副業の脳みそ、と自分の中で脳を使い分けるようにしています

「教員は忙しくて副業にまで手を出せない」という先生も多いかと思うんですけど、西田先生はどんな思いで副業に取り組んでいるんでしょうか

この活動を始めてから、僕の教師としての立ち位置と価値観がいい意味で180度変わったんです。
自分の時間を削ってやっている部分は少なからずありますけど、weclipでの活動が本業とこの先の自分の人生に活きてくるという確信が間違いなくあるので、その思いでやっています
本業への影響

weclipでの活動を通して、教員の仕事に良い影響はありましたか?

やっぱり授業ですね。学びを外に開いていくことを意識するようになりました

「学びを外に開く」とはどういうことでしょうか

例えば、地域創生で有名な島根県隠岐郡の海士町の小学生や中国の日本人学校の小学生とオンラインで繋がり、いっしょに授業をしました。
あと学校の外へ出てゴミ拾いをして、児童といっしょに地域の現状を見て回り課題を作るなど、学校の中にとどまらず、外へ開いて学習をプログラムするようになりました

学びを外へ開くと児童からどんな反応がありますか?

すごく楽しそうです。
やっぱり学校の中だけの学びって「せまいな」と思います。weclipで活動しているとほかのメンバーから言われることもあって「学校をどんどん開いていこうよ」って思います

ほかにもweclipからの影響はありますか?

0から1を作ることを躊躇わなくなりました。
学校ってどうしても「例年通りやりましょう」とか、もともと存在するものに積み上げるような活動が多いと思うんです。でも毎週あるweclipのミーティングで、何もないところから新しいものを作り出すことをいとわないっていうのを感じていて、それが僕にとってすごく新しい価値観だったんです

確かに、学校で0から作るものって少ないかもしれないですね。
西田先生が新しく作ったものについて詳しく聞きたいです

いま4年生の担任なんですけど、総合的な学習の時間で環境問題を扱ったときに、何をしたいか児童と相談したら「ゴミ拾いをしたい」と言ってきて、ゴミ拾いをするところから学習がスタートしました。
昨年の履歴はあるので例年通りに進めることもできたんですけど、今年の4年生と昨年の4年生はもちろん違うんですよね。なので「いま目の前の児童は何がやりたいんだろう」と考えるところからスタートしました

前述のゴミ拾いはそうやって始まったんですね

それを通して児童の中で「ゴミのポイ捨てをやめさせたい」という話になりました。そのために「ポスターを作りたい」となったんですけど「ポスターを貼るだけじゃポイ捨てはなくならないんじゃないか」という新たな問いが生まれました

ポイ捨てについてすごく深く考えていますね

そこからがおもしろかったんですけど、児童が自分たちで幼稚園・保育園に電話してアポを取って、実際に園まで行きました。園児に「こういうポスターを作りました」って発表したり、いっしょにクイズをやったりしたんです。
それって僕がアドバイスしたんじゃなくて、児童が自分の思いで動いているんです

児童が「やりたい」って言ったことを手助けして、学習するんですね

そうですね。そういう姿を見ると、児童といっしょに0から作ったんだなって思います

今後の目標とお知らせ

weclipで活動するうえで今後の目標はありますか?

協育文化を持続的なものにして、日本中に広めることが今の夢です。
僕らは子どもをみんなで育てるだけじゃなく、大人もいっしょに育っていく社会を目指して 「共育」とも言っています。そんな協育・共育文化を作っていくために頑張りたいと思っています

何か宣伝があればどうぞ!

ちょうどいま世田谷で『コエドスポーツ』といって、子どもにいろいろなスポーツの機会を提供するプラットフォームを作っていて、協力してくれるスポーツクラブを募集しています

クラブを持っていないフリーの指導者だと難しいですか?

チームを持っていなくても大丈夫で、僕らのビジョンに賛同してくれる方を集めていきたいと思っています。
ゆくゆくはスポーツだけじゃなく英語教室や日本の伝統文化にも触れていくことも考えていて、子ども達の集まる場所にいろんな要素を入れたコミュニティ作りたいと思っているので、そういう分野の方ともビジョンを共有していきたいですね

西田先生、活動への熱い思いを聞かせてくださりありがとうございました!
株式会社weclipのWEBサイトはこちら▶︎▶︎https://weclip.jp
インタビューまとめ
- 教育支援事業の会社で副業
- 教員の仕事に支活かせる、本業に支障のない副業なら兼業届は受理されやすい
- 学校での学びを外へ開くようになった
- 0から作り出すことを躊躇わなくなった
- 大人みんなで協力して子どもに関わっていく協育文化を広めたい