今回のインタビュー企画は番外編!
神奈川県にある私立、武相中学・高等学校に勤める ささ先生は学校のYouTubeチャンネル・Twitterアカウント・Instagramアカウントを立ち上げました。
従来のPR方法とは異なるSNS戦略を学校へ持ち込んだ若手教員の改革、その意気込みを伺いました!
ささ先生のプロフィール
名前 | ささ |
年齢 | 20代 |
勤務場所 | 武相中学・高等学校 |
勤務形態 | 専任 |
担当教科 | 国語 |
学校のSNSアカウント運営業務について
ささ先生は武相中学・高校のSNS運営を立ち上げたということですが、まずは学校でどのSNSに取り組んでいるのか教えてください
ラインナップが本格的ですね。TikTokはこれからという感じですか?
TikTokは考えていたこともありますが、今のTikTok人気はそのうち収まるだろうと思って、手は出さないでいます
なるほど…手あたり次第にやるわけではなく考えがあるんですね
SNSを運営する目的
学校アカウントを運営する目的を教えてください
全部のSNSに共通してることなんですけど、認知度と好感度を上げることがSNSの役割だと思っています。
やっぱり私立学校である以上生徒を集めなきゃいけないので、知ってもらう、目に触れる機会を増やすっていう意味でSNSが役に立ちます。
検索したときに引っかかるような、検索されやすい言葉を入れるとか、そういうところを考えて運営してます
SNS運営を始めてから反響はありましたか?
YouTubeはすごく反響がありました。出演した先生は、生徒に感想を言われているみたいですし、保護者からも「動画に出てた先生でしょ」と言われることが多いそうです。
そういう話を聞くとYouTubeが1番影響力があるなと感じます
では運営しているSNSについてそれぞれ詳しく教えてください!
まず、Twitterではどんな投稿をしているんですか?
在校生の保護者へ向けて行事予定や報告を発信したり、ホームページやYouTubeを更新した報告をしています。受験生に向けてのイベント告知なども。
文字情報が多いものはTwitterに上げています
更新の頻度は決めているんでしょうか
更新頻度は特に決めてないですけど、1週間以上は空かない方が良いなと思っています
Twitterアカウントを運営するにあたって何か参考にしたものはありますか?
参考にしたものは特にありませんが、個人的には「SHARPさんのアカウントくらい砕けた感じでやりたい」と思っています
この投稿をInstagramで見る
Instagramではどんな投稿をしていますか?
インスタはストーリー投稿がメインです。ストーリーを毎日1件投稿して単純接触効果を高める、見れば見るほど興味を持つっていうことを狙いにしています。
毎日の学校の様子や景色、「おはようございます」だけでも上げてます
ストーリー投稿メインって今どきの使い方ですね
今どきのインスタのユーザーはストーリーしか見ないだろうと思ってそうしています
確かに…若い人ほどそうですよね
Twitterでもインスタでも、ツイートやストーリーを上げるのに一件一件学校から投稿の許可が必要で、大変だから昨年までストーリーはやってなかったです。それをなんとか、下書きの状態で許可が得られれば投稿できるようになったので、今は毎日1件上げることを目標にやっています
ストーリーをメインにしてから変化はありましたか?
フォロワーの増え方が圧倒的に変わりました、倍くらいになったと思います。
やっぱり毎日ストーリーを上げてると「このアカウントはちゃんと動いてるんだな」って伝わるんだと思います
Instagram運営で参考にしたアカウントはありますか?
洋服の青山(@aoyama_girls)でやってる戦略が、若者のお役立ち情報を配信して、その中にときどき商品のPRを混ぜているんです。それを真似しようって案が出たんですけど、実際はまだできてないです。今後やってみたいことのひとつですね
YouTube
YouTubeではどんな動画を投稿しているんですか?
YouTubeは明確なビジョンがあるわけじゃなく「こういう動画があったら良いよね」って思いついたら撮影することが多いです。動画は伝えられる情報量が圧倒的に多いので、どんなものがあったら見てもらえるのか、一件一件じっくり考えて制作に進みます。
特にこの学校は部活目的で入学してくる生徒が多いので、見学に来なくても雰囲気がわかる動画や、学校のPRできるものを撮影しています。
あとは学校説明会をオンライン化したくて、説明会の動画を毎年出しています。
学校説明会の動画があると説明会のためにわざわざ来校しなくていいですもんね
来校してもらう学校説明会と同じ内容を配信した動画が数千回再生されているので、単純に人数には換算できないかもしれないですけど、「数千人説明会に参加してくれた」と考えれば充分なできじゃないかなと思います
YouTubeにすることで集客効果が何倍にもなる可能性がありますね。
あとほかにひとつ、再生回数がすごい動画がありますよね…
たまたまバズった学園祭の動画ですね。学校の先生の意外な一面が見られると、いろいろな人に興味を持ってもらえるんだと再確認できました。
今後もせっかくなら先生の特技を披露したりして、「どんな先生がいるのかな?」って調べたときに、学校の顔である先生たちの様子が見られるコンテンツを作っていきたいなと思っています
公式LINE
公式LINEではどんな配信をしていますか?
公式LINEは受験生とその保護者向けとです。「説明会◯月◯日から予約できます」「受験勉強のこういうところがポイントです」とか、受験情報などを配信しています。
あと今年、「公式LINEに登録すると過去問半額」のキャンペーンを実施したら、昨年の倍くらい売れましたね
広報部のSNS運営チームについて
YouTube・Twitter・Instagram・公式LINE、これだけやるのはかなり大変なお仕事だと思うんですけど、運営チームには何人の先生がいるんですか?
今は8人でやっています
校務の中にある組織なんでしょうか
広報の中でさらに分掌を分けています
その8人はどんな先生が集まっているんですか?
若手の先生で全員20代です。
今まで学校にSNSのノウハウがあるわけじゃないので、元々SNSをある程度使ったことがある先生でやっています
メンバーはささ先生が集めたんでしょうか
基本的には「この人達で」と当てがわれました。ただそのときに「若手を集めたい」って要望は出しました
各SNSの担当は決まっているんですか?
一応担当は分けてるんですが、YouTubeの撮影は人数が多くないとできないので、その辺は臨機応変に助け合いながらって感じです
効率的にSNSを運営するために何か工夫しているんでしょうか
あんまり効率は求めてないです。校務というよりは+αの仕事なので、できなかったらできなかったでいいものだと思うんですよね。なので「無理をしない程度に頑張りましょう」っていうスタンスです
運営チームの士気を高めるためにしていることはありますか?
達成できなくてもいいとは思ってるんですけど、目標の数字は決めてます。流れとしては、
- フォロワー数と視聴回数を増やす
- 1を増やすことで学校説明会の参加人数を増やす
- 2が増えれば入学者も増える
ということで「まずはフォロワーを増やす」っていうわかりやすい目標を立てています。それこそノウハウがあるわけではないので、探り探りやっています
ゴールまでの道筋があるんですね。
そういった目標やそれぞれの業務は、チーム内でどうやって共有しているんですか?
年度始めに「こういう方針でやっていこう」というミーティングをしてます。実際その通りにできてるかというと怪しいんですが…パワポで作った目標や行動指針の資料をチーム全員が見られるようにして、あとは各自考えてやってくれてます
まだこういった組織のない学校がSNS運営チームを立ち上げるとしたら、若手の先生でやるのが良いですかね
そうですね。使ったことがある人じゃないと肌感でどういうものがTwitterでウケるとか、インスタでウケるとか、わからないと思うんです。その辺はやっぱり使ううちに学んでいくものかなと思いますね
SNS運営のノウハウは経験から
ささ先生は各SNSの特性に詳しいなと感じたんですけど、それぞれの運営ノウハウはどうやって学んだんですか?
ノウハウは特に学んだわけではないです。一応、ネットでどんなことに取り組んでいる会社があるのかとかは調べましたけど、きちんとSNSマーケティングは学んでいなくて、これからの課題だと思っています
特に学んだわけではないのにこのクオリティが出せるってことは、普段からよくSNSに触れている感じですかね
人と比べて格段に使ってるというわけじゃないと思いますが。今は何でもネットで調べられるので、わからなかったらすぐ調べています。
新しいことを思いついたり見つけたりしたときは、すぐに活用しようとは意識しています
特に何かで学んだわけではなく、今までSNSに触れてきた経験と、その都度調べたことを参考に進めてきたってことでしょうか
そうですね。「SNSの役割」はネットかなにかで調べたんですけど、①名前を知ってもらう ②「武相」って検索したときに手に入る情報をのレパートリーを増やす、って知ってなるほどなと思いました
YouTubeのサムネイルなんかは型を知っている人が作っているなと思ってたんですけど、これも何かで勉強したわけではないんですか?
特定の何かというよりは日頃、目にするサムネイルで目を引くのってどういうのかなって考えた結果という感じです。特別勉強したことはないです
自然とああいうサムネイルが作れるってことは、普段からよくYouTubeを見ているんですか?
人並みには見てます。動画投稿を始めてからは意識的に「どういうサムネイルが目につくのか」っていうのは考えるようになりました
SNS運営に必要なアイテム
各SNSの投稿は何で行っているんですか?
Twitterは学校のパソコンと、モバイル端末も使ってます。インスタは写真を撮ってそのまま上げるので主にモバイル端末を利用しています
ということは写真の撮影はスマホですか?
そうですね。カメラを持ってる先生が撮ってくれることもあります
写真の明るさ調整などの加工はどうしていますか?
Twitterもインスタもアプリ上でやってるだけです
YouTubeの動画撮影は何を使っているんでしょうか
本格的な撮影は学校のビデオカメラを使うことが多いです。SONYのHDR-CX470ですね。ただそれを使うと容量が大きくなって編集がすごく大変で。スマホで撮る方が編集はしやすいです
動画編集は何のソフトを使っていますか?
AdobeのPremiere Proです。Adobeのソフトが使えたらこれから役に立つなと思っていま本格的に勉強中です
ほかに何か使っているものはありますか?
こういう本です、『配色デザイン事典』とか『あるあるデザイン』。サムネイルを作るとき配色の参考にしています。「この色を組み合わせるとこんなイメージになる」っていうのがわかります
学校アカウント立ち上げの背景
ささ先生が学校のSNS運営を始めたいと思った理由を教えてください
コロナが始まった頃2〜3カ月、休校だったんです。そのときにせっかく時間があるなら学校のPR動画を作ろうと思って始めました
学校の宣伝として動画撮影を始めたんですね。
私学の宣伝って学校説明会を開いたりパンフレットを配ったりするのが従来の形式だったと思うんですけど、動画で宣伝しようと思ったのはどうしてですか?
当時はYouTubeの人気が上昇していて注目されている時期でした。そこで学校の「部活が強い」とか「施設が良い」のを視覚情報として与えられる動画が一番PRに向いているのではないかと思いました
立ち上げは、ささ先生1人で始めたんでしょうか
同期と「YouTube良いよね」って話をして、いっしょに編集ソフトを探しに行ったりしました。実際に撮影や編集をしたのは自分がメインだったんですけど、「やろう」って言ってくれた人がいたことは後押しになりました
学校への提案
YouTubeに動画を出したいと思って、どんな風に学校へ提案したんですか?
まず最初、コロナ前に実施していた学校説明会でオープニング映像を作って見せてみたんです。その説明会はうまくいったんですけど、YouTubeの開設までは時間がかかりました。
コロナ休校でちょうど動画編集に時間が取れたのと、その頃YouTubeでの授業配信が世の中で一般的になったことが後押しになりました
学校説明会のために作った動画が実績になってYouTubeチャンネルの開設に進めたんですね。
YouTubeの開設は、学校のどのポジションの人に提案するんですか?
管理職と広報の部長ですね。順番的には広報で案をを通して、最終的には広報を含めた全体の会議で審議します
YouTube開設の許可はスムーズに取れたんでしょうか
YouTubeをやること自体の許可は取れたんですけど、動画の内容はなかなか許可がおりなかったんです。やっぱりリスクもあるので、「ここはもっとこうしてほしい」とか
どんな内容がNGだったんですか?
最初は結構くだけた学校紹介の動画を作っていて、それはやっぱり「リスクがある」と捉えられてなかなか通らなかったんです
YouTuberが作るような流行りの型で作った感じでしょうか
そうです。それを「ここはカットした方がいい」と言われた通りに修正して、アップロードにいたりました。
最初の動画で「ここまでは大丈夫」というラインがはっきりしたので、その後は割とすんなり通るようになりました
学校側と折り合いをつけることが大切ですよね。
じゃあYouTubeを始めること自体に大きな反対はなかったですか?
広報の先生は「そういうことはぜひやってほしい」という反応だったので、その先生にお願いして会議で通してもらいました
学校はデジタルの新しいものに寛容な方ですか?生徒用iPadも導入してる感じですかね
いや、iPadやタブレットの導入はまだなんです。たまたま広報の先生には興味を持ってもらえたんですけど、学校全体としてはまだ腰が重いように思います
SNS運営へ取り組むことに対して、年配の先生からの理解は得られているんでしょうか
最初はどうだったかわからないですけど、3年くらいやって今は定着したと思います。
振り返ってみると、それはただいきなり「やりたい」って言ったからではなく、ほかの業務で関係性を作ったり、仕事ぶりの積み重ねがあったからだと思います
ささ先生への評価があってこそ、提案が通ったわけですね。
じゃあ今は学校全体でSNSへ取り組む環境ができあがりましたか?
全体として取り組んでるとまでは言えませんが、反対はなく比較的寛容に受け入れてくれていると思います
学校アカウントを運営する思い
今後のSNS運営について、ささ先生はどんな思いを持っていますか?
そもそも始めた理由は学校の宣伝ですが、これから先「オンライン上で発信する力」が必要な時代になってくると思うんです。学校や先生だけでなく、生徒も発信する側になってくると思うので、例えばユーチューバーを見て「おもしろい」って言うだけじゃなくて「自分もクリエイティブなことをしてみる」っていう意識が生徒にも芽生えたら良いなと思っています
発信活動をした方が良いと考えるのはなぜでしょうか
これまでの時代は、発信するのは企業やメディアなど一部の人だけだったと思うんですけど、今は個人が発信して影響力を持てる、個人の影響力が出せる時代だと思うんです。
受け手に周っているだけだと損する生き方になっちゃうと思うので、自分の考えややりたいことを発信する側に周る意識を生徒が持ってくれるとうれしいですね
ささ先生、興味深いお話を聞かせてくださりありがとうございました!
インタビューまとめ
- 学校の認知度と好感度を上げることがSNSの役割
- 最終ゴールは入学者数を増やすこと
- 広報に所属する若手の先生で運営チームを組んでいる
- 配信するものは独断で出すのではなく、学校に許可を取る
- これから発信力が必要な時代になってくる