ヘアスタイルを楽しんでいる先生にインタビュー!
今回は、小学校教員の侍ed先生(@samuraiedcoach)にお話を伺いました。
マンバンに込めた想い、自分がやりたいスタイルを貫くための土壌づくりなど、一風変わった髪型にしたい先生はぜひご覧ください!
侍ed先生のプロフィール
名前 | 侍ed先生 |
年齢 | 30代 |
勤務場所 | 東海地方の公立小学校 |
勤務形態 | 専任 |
@samuraiedcoach |
侍ed先生の髪型、マンバン
侍ed先生は、教師になってからどんな髪型をしてきたんですか?
教師になって最初はタイの日本人学校に勤めていたので、タイっぽくしたいなと思ってパイナップルみたいな髪型にしてました
ほかにはどんな髪型をしてきたんでしょうか
ここ3年くらいはマンバンです
マンバンとは
マンバンってどんなヘアスタイルなんですか?
お団子にする髪型を英語でバン ヘアスタイルって言うんですけど、男性バージョンはマン バン ヘアスタイルでマンバンって言います。サムライヘアって呼んだりもします
侍ed先生はどうしてマンバンにしようと思ったんですか?
個人的な理由は、単純にやってみたかったからですね。「かっこいいな」って思ったのと、やったことがないことをやりたいなって
マンバンに馴染みがない方もいるかと思うのですが、侍ed先生は何を見て知ったんですか?
一番最初に見たのはサッカーのイブラヒモビッチ選手です。サッカー選手や海外のセレブとかから流行りだしたみたいですね。
日本でも意外とマンバンにしている方がいたので、そういうのを見てかっこいいなぁと思って興味を持ちました
マンバンにすることで子ども達に伝えたいこと
ほかにもマンバンにしようと思った理由があるんでしょうか
対外的な理由は、教員としてクラスに多様性を担保したかったからです
多様性の担保、と言いますと
教員がちょっと変わったことをしていてそれを子ども達が受け入れている状況だと、『多様性』の指導がとてもしやすいんですね。
LGBTQやジェンダーバイアス、人種や肌の色が違うとか、そういう『人との違い』に関する指導がすんなり入るんです
小学校の多様性の指導って、例えばどんな場面で行うんですか?
道徳とかで「男の子だからこう、女の子だからこう」っていうジェンダーバイアスの話が出たときに「先生は髪を結んでるけどこれは女の子だから結んでる?」って聞いたら子ども達は「違う!それは先生が好きでやってるんでしょ」って。
子ども達が当たり前だと思っている男らしさ女らしさについての発言が出たときに「ちょっと待ってね」って指導をしたりとか
確かに、マンバンにしている侍ed先生の指導なら子ども達も受け入れやすそうですね
あと昔海外で働いていたので国際理解に絡めて授業をすることも多くて、そうすると人種の話が出てくるんです。普通の教員が指導するとやっぱり、肌の色が黒いとかで子ども達が「え?」ってなるんですけど、変な髪型の先生を日常的に見ていると子ども達も「そっか、肌の色が違う人もいるんだ」って。
「いろんな人がいるんだ」っていう土壌が養われていると思います
「外見でその人を決めつけちゃいけない」ってことですかね
そうですね。
一番印象的だった出来事が、自分のクラスじゃない子どもと休み時間に遊んでたら、その子が僕に「うちのお母さんが「侍ed先生、頭おかしいよね」って言ってたよ」って僕に言いに来たんです。「そうなんだ。君はどう思うの?」って聞いてみたら、その子は「先生は優しいと思う」って。
だから「触れ合って思ったことを大切にすると良いよ」って話をしたエピソードがあって
それは印象的ですね
その話を自分のクラスに持ち帰って「今日1年生の子にこんなこと言われたんだけど、どう思う?」って投げかけたら、クラスの子達は「えー!先生は好きでその髪型をやってるんだから、そう言うのはおかしいと思うよ。見た目で頭おかしいでしょうって判断するのはよくないと思う」って言ってくれました。
人との違いや見た目で判断しないってことを、ちゃんと受け入れられる土壌になったかなぁと思ってます
侍ed先生の髪型が子ども達に良い影響を与えているんですね。
侍ed先生のそういう考え方は、海外で働いた経験から培われたんですか?
そうかもしれないですね。
海外では違う国の人がいるのもあたり前だし、肌の色が違うのもあたり前だし。タイで働いていたんですけど、タイってジェンダーに対する意識がすごくゆるくて、町じゅうにニューハーフの方や、同性同士で付き合っている方も多くいるんです。海外で働いてたから培われた部分は多くあると思います
マンバンが学校で受け入れられた理由
マンバンって髪を伸ばさないとできないですよね
そうなんですよ。伸ばすのがすごい大変で、男性だと結べるようになるまで半年から1年ぐらいかかるんです。
結べる長さになって横と後ろを刈り上げて完成なので、伸ばし始めてから半年くらいはずっとオールバックでした。だんだん結べるようになって、刈り上げ部分を増やして、みたいな感じです
マンバンヘアが完成したら学校ではどんな反応がありましたか?
「ああ、いいんじゃない」みたいな、結構すんなり受け入れてもらえました
男性教員としては”変わった髪型”に入るかと思うのですが、意外と受け入れられたんですね
学校での反応には前提があるんです。
僕いまの勤務校がすごく長くて、マンバンが完成したときにはほとんどの学年を持っていたので、子ども達も保護者もほとんど僕のことを知っていました。なおかつ学級経営がうまくいっていたので、ちゃんと信頼関係が築けてたんです
侍ed先生がどんな人か知られていたんですね
2つ目の前提が、職場で仕事をこなして、誰かが困っていたら率先して助けるようにしてました。風通し良くコミュニケーションがうまくいくようにいろんな働きをしてたので、職員とも信頼関係がありました
周りの先生から受け入れられる土壌もあったわけですね
そして3つ目が、子ども達・保護者・周りの先生方からもともと「あの先生はちょっと変わってる」って印象があったと思うんです。
例えばGIGAスクール構想が始まる前からかけ算の授業でプログラミングを使ってゲームを作ったり、後ろの黒板に世界地図を貼って「国のこと調べたら色を塗っていこう」ってしたり、あまりほかの先生がやらない学級経営をしていました
「侍ed先生ならそういうこともするだろう」っていう印象だったんですね
前提条件として
- 子ども達・保護者との信頼関係があった
- 教職員とも信頼関係があった
- 「あいつはちょっと変わったやつだぞ」と思われていた
この前提があった上で、マンバンは受け入れられていました
侍ed先生の働き方があった上で受け入れられたんですね
1回だけ管理職の方から「侍ed先生のその髪型はさ、〇〇先生みたいに長くするの?」って女の先生を指して言われたことがあるんです。たぶんやめてほしかったんだと思うんですよね。
でもそう言われたときに「そうなんですよ。今年度はLGBTQやジェンダーバイアスについて指導しようと思ってるので、先生が率先してそういう姿を見せるのが大切だと思ってやっています」って言ったら、それからはもう何も言われなかったです
なるほど…。変わった髪型が受け入れられる土壌づくりがあって、いざ「なんでそういう髪型をしてるの」って聞かれたときに答えられるからマンバンができた、ってことですかね
そうです。
子ども達も「なんで男の人なのに髪の毛長いの?」って聞いてくることが多くて、「かっこいいからだよ。テレビでも髪長い人見たことない?全身ムキムキのぶつかりあう人」「あ、お相撲さん!」「お侍さんも長かったらしいよ」って話したりします。
日常の中にも髪が長いことは普通に紛れ込んでる、みたいな感じですね
固定観念を壊すきっかけになりますね。侍ed先生のお話を聞いて考え方を広げるきっかけになるなって思いました
僕もそう思ってマンバンをやってたんです
例えばなんですけど、転勤して1年目だったらマンバンはしますか?
やらないです、それは厳しいと思います
どうしてでしょうか
やっぱり教職員の信用失墜行為はしちゃだめって言われるじゃないですか。個人的には男性の髪が長かろうが、例えばですけど刺青が入っていようが、それは個人の問題だから別に良いと思うんです。だけど人間関係って世間からの評判の上に成り立っていると思うので、転勤してまだ人間関係ができていないときにそんな先生がいたら、周りは「えっ?」ってなると思うし、ちょっと触れづらいような雰囲気になっちゃうと思うんです。
だから転勤して1年目や先生になった1年目は、普通の髪型にしている方がうまくいくと思います
侍ed先生は自分がやりたいことを押し通しているわけではないんですね
そうですね。自分がやりたいことを押し通すために、根回しや土壌作りが大切だと思います
ヘアドネーションでマンバンに一区切り
今はマンバンをやめて髪を切ったんですか?
切りました
伸びたから切ったって感じでしょうか
本当はずっとしていたかったんですけど、もうすぐ転勤なんです。なので「どこかのタイミングで切らなきゃいけないな」って思ってたんです
転勤に備えての準備ですね
あとはせっかく理由をつけて髪を長くしてたので、良い形で終わらせる何かがないかなって探したら、ヘアドネーションっていうのがあることを知りました。「じゃあヘアドネーションをして終わりにしよう」と思って、必要な長さになったので切りました
ヘアドネーションってなんですか?
髪の毛を寄付することです。切った髪の毛を加工して医療用のウィッグにしてくれるんです。
僕が寄付したのはJapan Hair Donation & Charity、通称 ジャーダックって呼ばれるところなんですけど、小児がんや先天性の脱毛症、不慮の事故で髪を失った子どもにウィッグが活用されます
髪の寄付はどうやったらできるんでしょうか
ジャーダックと提携している美容院に行けば切った髪を送ってもらえると思います。僕は周りにそういう美容院がなかったので、いつもの美容院に行って「ヘアドネーションしたいです」ってお願いしたら切った髪を束にしてもらえたので、それを自分で送りました
ある程度の髪の長さは必要ですか?
寄付は最低31cmです。根元から全部切るわけにはいかないので、31cm+α長さがないとできないです
傷んだ髪だと難しいですかね?
どんな髪質でも大丈夫だそうです。パーマがかかっていても傷んでいても、トリートメントして綺麗にしてから使うそうです
長ささえあれば誰にでもチャレンジできそうですね!
侍ed先生が今後しようと思っている髪型はありますか?
今までいろんな髪型をやってきてあとひとつだけ、憧れがあるのはドレッドヘアです。教員しているときに実現できるかわからないですけど、将来1回はやってみたいなと思ってます
インタビューまとめ
- マンバンにすることで、子ども達に多様性を担保したかった
- 人と違うことや見た目で判断しないことを子ども達が受け入れやすくなる
- どんな状況でもマンバンができるわけではない
- 学校での信頼関係を構築した上でできること
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