先生の子育て!今回のインタビューは、私立高校の非常勤とライターを兼業している猪狩はな先生(@hana_so14)
猪狩先生は、子どもの成長を見守るために公立中学の正規雇用を手放す決断をしたそうです。
猪狩先生が選択した働き方についてや、仕事と子育てを両立するコツなどを伺いました。
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猪狩はな先生のプロフィール
名前 | 猪狩はな |
年齢 | 30代 |
勤務場所 | 私立高校 |
担当教科 | 国語 |
勤務形態 | 非常勤 |
note | https://note.com/hana_so14 |
@hana_so14 |
子育てと仕事をこなすために選択した道
まずは猪狩先生の現在に至るまで、仕事と子育ての時系列を教えてください!
大学を出てから正規雇用で公立中学の先生になりました。5年勤務して産休育休を2年くらい取って、上の子が2歳、下の子が0歳のタイミングで復帰しました。復帰して1年間フルタイムで働いていたんですけど、コロナ禍で保育園がめちゃくちゃ閉まる時期だったんです。下の子もすぐ熱をもらって帰ってくるので休みまくり、「これは厳しいな」って話になりました。
それで今年度、私立の非常勤講師に転職したんです
公立中学フルタイム勤務を離れる決断
育休を終えてフルタイムで復帰したとき、担任は持っていたんですか?
副担任でした
そこは仕事量の配慮があって副担任にしてもらえたんでしょうか
そうですね…。最初「来年度から復帰します」って面談したときの校長がパワハラっぽい感じの人で、時短勤務を取らせたくない感じだったんです。そのときは「3年生の担任にするからフルタイムで復帰して」って感じで言われて「じゃあフルタイムでお願いします」ってなったんですけど、そのあと事務さんやママ先生が校長にいろいろ言ってくれたみたいで、1年生の副担任になりました
それは大変でしたね…。猪狩先生の周りのママ先生も、そういった経験をされているんでしょうか
私のときはけっこう圧をかけられたからみんなそうなのかなと思ったら、「時短で復帰してほしい」っていう管理職もいるみたいです。「補助がつけられるから時短の方が良い」って言ってくれる人もいるらしくて、考え方によって違うみたいですね
地域の中でも校長の裁量によるんですね。
現在は私立高校の非常勤に転職されたということですが、公立の正規雇用を手放すことに不安はありませんでしたか?
辞めるとなると金銭面や将来の不安もあったので、かなり悩みました。
ただフルタイムで復帰して早い段階から「この生活は厳しい」って家で話していました。子どもがまだ小さいうえにコロナ禍で、フルタイム勤務で…。
そんな中で教員同士の人間関係が一番つらくなってしまったんです。「早く帰れて良いよね」って言われたりとか
それはつらいですね…
部活も一応名前だけ入ってるって感じだったんですけど「たまには大会の引率行ってよ」ってチクチク言われたり…。
人間関係のストレスが仕事を手放す不安とか未練を上回ってしまったタイミングで「辞める」って決めました
担任業務から離れる未練はなかったですか?
それが一番悩みました。卒業生を出した経験もあるので、「担任は大変だけどやりがいがあるし楽しい」ってことが心の中にあったんですけど、精神的に参ってしまってて。
「ここで完全に心を壊して働けなくなるよりは一度辞めて、身の回りの環境や気持ちを整えてから再出発でも良いのかな」と思いました。戦略的撤退というか、現場から一度離れる決断をしました
私立高校非常勤を選択
現場から離れるとなると教員自体を辞めてしまう方もいるかと思うんですけど、猪狩先生は非常勤で教員を続ける道を選んだんですね
国語がすごく好きで教員になったので、「国語の授業をする」っていうのが自分の中で大切な部分だったんです。国語の授業に注力できるっていうところで、非常勤へ転職を決めました
国語の先生が中学から高校へ転職することについて、難しさはあるんでしょうか
高校に上がると専門性が高くなるので、専門でない現代文は教材研究に時間がかかりました。
生徒にどう伝えればいいのかかなり悩んでトライアンドエラーの繰り返しです
実際に教えていて感じる中学・高校の違いはありますか?
中学生だと何かひとつ言えば「わー!知ってる知ってる!」ってなってたんです。いまの高校は進学校だからか「これ知ってる?」って聞いてもシーーン…って、みんな絶対知ってるのにななめ下向いちゃったりして(笑)反応が少ないっていうギャップがありますね
学校によって生徒の反応って違いますよね。
転職活動はスムーズに進みましたか?
いま働いている高校は、もともとそこにいる大学の後輩に紹介してもらったので、「あなたの話は聞いてますよ」って感じで選考が進みました。
それと並行して教員の派遣会社にも登録して面談しました。結局いろいろな条件から、後輩に紹介してもらった今の学校に勤務しています
勤務条件で気にしたポイントはありますか?
1日の勤務時間数と、週の勤務日数は気にしました。
なるべく早い時間に退勤できるよう「1日3コマ授業があるなら、なるべく3つ詰めて入れてほしい」って希望を先方に伝えて、お互いの希望を組める学校を探しました
勤務に関する希望ってどの段階で学校へ伝えたんでしょうか
今の勤務校は間に共通の知り合いがいたので事前に聞きやすかったんです。
派遣会社で探したときも、学校との間に派遣会社の人が入るので聞きやすかったです
勤務条件を気にして私立の学校を探すなら、派遣会社へ登録するのがおすすめですかね
性格にもよると思うんですけど私は直接聞きづらい性格なので、間に人が入って確認してくれるのは性格に合ってたと思います
私立の勤務条件って全て開示されていなかったりして、確認しづらいですもんね。
子育てをするうえで、非常勤を選ぶメリットを教えてください
勤務時間が短いので、家事や育児に時間を使えるのがおすすめポイントです。
フルタイムで働いていたときは「子どもの保育園への送り方もわからない。保育園グッズもつめられない」っていう母親で、「育児をほとんど夫にやってもらっている」っていう負い目がありました。子育ての時間と余裕が生まれたのが一番のメリットです
非常勤と並行してライター業務もスタート
猪狩先生は現在ライター業もされているとのことですが、始めたきっかけを教えてください
長男が産まれた頃から趣味でnoteを書いていたのが、ライターを始めようと思ったきっかけです。
収入源にするというよりは、「書くことが楽しいからそれでお金ももらえたらハッピー」って感じで始めました
転職して下がった収入を補おうとは考えていなかったんでしょうか
お金が入ってくるとモチベーションも高まるので「今年中に◯万円」みたいな目標は立てています。でも軸足は先生なので、「ライターは緩やかにやる」っていう気持ちでした
ライターを続けてみて今のところ、どうですか?
ライターの世界ってぜんぶ学校とは違う世界で、自分で仕事を取ってきて書いて提出するっていうのがすごく新鮮でした。
楽しみながらやっていく中で少しずつ軌道に乗ってきたので、「もうちょっと稼いでみるか」ってなってきた感じです
軌道に乗るまでが大変な仕事だと思うんですけど、何か軌道に乗るきっかけがあったんでしょうか
「教育系の記事を書きます」って商品をココナラに出したら、そこから「古典文学の記事を書いてほしい」っていう依頼がきたんです。「自分の専門分野について書いたら喜んで貰える」って経験が自分の中ですごくプラスになって、楽しい実感が持てました。
そこから執筆の単価が上がって収入も増えたし、精神面でもお金の面でも大きなポイントになりましたね
先生とライターと子育て、全部をこなすのはかなり大変だと思うんですけど、コツはありますか?
自分で選んだ道とはいえ常にマルチタスクの状態なので、手帳にタスクを書き出してから作業してます。
バーチカル型の時間軸がついてる手帳を使っているので「◯時まで仕事する」「◯時には子どもを迎えに行く」って書いて、時間を意識できるように書き出しています
猪狩先生へ手帳について詳しくインタビューした記事はこちら→『30代高校教員の趣味は、手帳を書くこと』
仕事を終わらせるコツ
授業準備など学校の仕事はいつ行っているんでしょうか
授業が終わったあとの1〜2時間で授業の準備をして帰るっていう流れを作っています
授業準備ってやろうと思えばいくらでもできるかと思うんですけど、決めた時間で終わらせるコツはありますか?
もともと子どもが生まれる前は本当にどこまでもこだわって、プリント1枚にいっぱい装飾をつけたりして時間がかかってたんです。でもフルタイムワーママを経験したことで、けっこう削ぎ落としました。
「最低限ここまでやればOK」っていうラインで終わらせないと生活が回らないっていう経験をしたので、そこで「ワークシート1枚だったらここまでできれば良い」っていうラインが強制的にできました
最低ラインで終わらせないといけない生活を経て、仕事の型ができあがった感じですかね
そうです。
今は非常勤になったけど時間は無限じゃないし、ライター業も育児もあるので、仕事はフォーマットに流して微調整っていうのを繰り返してます。生徒に合わせて変えたり、「こうしてほしい」って言われたところは直したりしながら今に至ります
非常勤とはいえテスト期間などで忙しいこともあるかと思うんですけど、そういう時期はどう乗り切っていますか?
ライター業務をなるべく減らします。継続でもらっている案件は、テストがある月は少なめにお願いしてます。
あとはなるべく前倒しで教材研究をまとめてやっておいて、「◯月はテスト作りに集中」っていう風に見通しを作っていました
子どもが生まれて考えるようになったこと
お子さんが生まれて変わったことはありますか?
仕事もプライベートも含めて「どう生きていくのか」っていうのを、子どもが生まれてから初めてちゃんと考えました。
教員になってからはとにかく生徒のためを思って、朝早くから夜遅くまでずっと働いてるって感じだったんです。けど子どもが生まれて「そんな働き方はずっとできないな」って
お仕事に一生懸命だったんですね
「ただ仕事だけしている」っていう感じだったんですけど、子どもが成人して、結婚して、そういう成長を見たいって思ったら「自分の体にも気を使わなくちゃいけないな」って考えました。
「細く長く続けられる働き方を考えなきゃいけないな」「子ども達との今しかない時間を過ごすにはどうしたら良いのかな」って、今まで気にしたこともないようなことをいくつも考えるきっかけになったと思います
子育てで幸せだと思う瞬間を教えてください
いま家族みんないっしょの部屋で寝てるんですけど、広々とスペースがあるのに子ども達が私の右と左に来て「ママ!ママ好きー!」ってくっつきながら寝るんです。せまくて寝返りも打てないんですけど、そのときが1番幸せです
かわいいお子さんですね。猪狩先生、素敵なお話ありがとうございました!
インタビューまとめ
- フルタイム勤務に限界を感じ、私立の非常勤へ転職
- 採用前に勤務条件を確認するなら知り合いや派遣会社を挟むと聞きやすい
- ライターは楽しく収入を得ることができる
- 「ここまでできればOK」の最低ラインを決め、仕事を終わらせる
- 子どもの誕生が「どう生きていくのか」見つめ直すきっかけに
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